桜の咲くころに

終わり

私は桜が咲くころを恐れていた。
満開の桜を見ると恐ろしくなった。

長い冬を耐え忍び一年間のほんの一週間だけこれでもかと咲き狂う桜が悲しい。どうしてそんなに急ぐのだろう?

命の儚さを感じるから。
卒業式の別れを思い出すから。
父や祖父との別れを思い出すから。

満開の桜を見ると胸が切り裂かれた。

始まり

今は、満開の桜を真っ直ぐに見ることが出来る。

どんな事もただ真っ直ぐに見るという事を教えてもらったら怖くなくなった。

何かが終わった瞬間には何かが始まる。

始まれば終わる。終われば始まる。

始まりも終わりも同時にある。

世界は常に動いている。
動いているのに止まるから怖くなって苦しくなる。
悲しみの底は、同じ量の喜びでもある。

真っ直ぐに見ることが出来る今年の桜は美しい。

MIHOKO