人生最大の困りごととは

映し出されたもの

ある時歩いていたら、ビルの窓ガラスに彩雲が映った。

後ろを振り返るとハッとする虹色がある空だった。

ビルの窓ガラスに映し出されていなければ気が付かなかっただろう。

歩いていて後ろを振り返ることなんて滅多にない。

私たちは映し出すものによって実態に気づくことがある。
自分の姿を鏡を通して見ることが出来るように。

ある仕事終わりの午後、睡魔に耐え切れずうたた寝をして夢を見た。

「困った時に助けてくれて本当にありがとう」

老婆が泣きながら言った。

その時私は知っていた事に気が付いた。
私の望みは困っている人の役に立つことなんだと。
だって本当に困っている時に助けてくれる事ほどありがたいことはないから。

私にいったい何が出来るというのだろう?
でもそんなことはどうでもよい。
それを知っているだけで充分だ。

振り返ってみたら

幼い頃から、年上の人から沢山の事を教わって真面目な私はいつも人生のお手本を探してきた。自分が年を重ねるにつれて年上の人が減ってゆく。お手本が減ってゆく。と同時に年齢と成熟度は同じでない事に気が付く。
前しか見ていないと人生が先細りに感じてしまう。
ある時煌めきが映し出された鏡をみて振り返ってみたら素晴らしい世界が拡がっていることに気が付いた。
前にも後ろにも横にも見渡せば魅力あふれる世界があった。理解し合える人たちがいる。大切な事を教えてくれる人がいる。共感できる世界がある。

人の最大の困りごととは理解してもらえないという事かもしれない。

私はどれだけ理解できるだろう?

泣いてお礼を言った老婆は未来の私自身だ。
私は困っていた自分を助けたのだ。

MIHOKO