ある女

女は肉体を鍛えた。
縦に筋の入った腹筋こそが美だ。
堕落の象徴である緩んだフォルムは悪だ。

女は知識を蓄えた。
私は私の気に入ったカテゴリで知らない事を許さない。
ただし私の興味の引かないものは、知る価値すらない。

女は自分自身の理想を軸に完璧さを求めた。

私は私の世界では女王だ。
私より目立つものは許さない。

欲望にまみれた男どもよ。私には近づくな。
指一本でも触れたら容赦はしない。

男どもに媚びる女はどうかしている。
騙されているに違いない。

私は美も知識も手に入れた。
私は満足している。

そんな私でもコントロールできないものがある。
時間だ。
私は知っている。
筋の入った美しい腹筋もやがて骨が浮き出た弱々しいフォルムに徐々に変化していくだろう。
それを悲しく思うのは、そういう風に思わされているだけ。

花は散り際が美しいと言われるが、花はどんな時も美しいのだ。
やがて枯れて朽ちてゆく事こそが一番の恍惚の時なのだから。

そして私はまた生まれ変わる。